相手の気持ちを察する話
島根県にある足立美術館の庭園は、とあるアメリカの雑誌で日本庭園ランキング(Shiosai Ranking)では、初回の2003年から「連続日本一」に選出されています。
日本国内約1000箇所の名所・旧跡を対象にしたもので、「庭そのものの質の高さ」「建物との調和」「利用者への対応」などが総合的に判断されたもので、とくに細部まで行き届いた維持管理が評価されているそうです。
私が初めて足立美術館の庭園を見たときは、あまりの美しさに「ひゃー」と、変な声がでたほどです。
このお庭が一番よく見えるところに足立美術館の喫茶店があります。そこでコーヒーでも飲みながらゆっくりお庭を見ようかと思いましたら、そこのメニューを見てびっくりするお値段だったので、そこでも同じように「ひゃー」と、変な声が出ました。
だからその喫茶店には入っていません。
今思えば、ちょっと無理してでも入っておけばよかったかなと思っています。
現代において、一般的な住宅で日本庭園を造られるお施主様は、私の知るところめったにいらっしゃいません。
日本庭園は手入れが大変ですし、それなりのスペースも必要になります。それに今の若い方で日本庭園がお好きな方はかなり少数派だと思います。
私はなぜか昔から日本庭園が好きで、きれいなお庭を見ると心まできれいになるような気がします。
しかし、現在そうしたお庭は京都のお寺とかに行かないと見ることは難しいです。
先日とあるお寺に紅葉を見に行ったときの話です。そこには見事なもみじが鮮やかに色づいていました。
早速この美しいもみじをカメラに収めようとしたところ、ちょうど撮りたいもみじの前で2人のご婦人がおしゃべりをしています。
このまま私がシャッターを押すと、この2人のご婦人が映ってしまいます。
私は2人が移動してくれるのを辛抱強く待ちました。
しかしおしゃべりは終わりません。
「オネエサン、ちょっとだけ横にずれてもらえませんか?もみじの写真が撮りたいので」
するとご婦人方のひとりが、
「あららごめんなさい!私らここは見飽きてるから」
そういってちょっと嫌味っぽく横にずれて下さいました。
後で聞くと、お2人は観光バスのバスガイドさんでした。
最近SNSをやる人がふえているせいか、わたしが何かを撮ろうとすると、さっとよけてくれる人が増えました。
そういう時私は、シャッターを押した後、近くに行って
「ありがとうございました」
そう小さくお礼を言うようにしています。するとその方はニヤッとされます。
それは「あなたの心は察しましたよ」という満足そうな笑みに見えます。
さて、12月になると紅葉も散って本格的な冬がやってきます。
寒いのが嫌な私には、ありがたくない季節です。
それでも仕方がないので、去年着たコートを出してきました。このコートを毎日着る季節は、もうすぐそこに来ています。
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