忘れられない試合の話⓷
ブラスバンドが鳴ります。ブルーのメガホンが一斉に動きます。
自分たちの学校を応援するために、試合に出れなかった野球部員や在校生、OB、一般の人達が一体となっている姿は、本当に凄いものでした。
この中には、実際に出ている選手のご両親や兄弟、おじいさんやおばあさんも、きっといることでしょう。
自分の息子が打てばよいですが、もし三振したり、大事なところでエラーしたりしたら、どんな気持ちになるのでしょう。
もし私がこの試合に出ている球児の親で、息子が大事なところでエラーしたり、それがきっかけで負けたりしたら、ごめんなさいを何回言わなければならないでしょう。
私はいつものクセで、そんなマイナスなことも考えたりしていたのです。
あの「横浜高校」から1点を先に取ったのです。「横浜高校」の先発ピッチャーは「織田君」です。150キロ以上のスピードボールを持つ今大会屈指の好投手です。
そのピッチャーから先制したことは、私から見て凄いことでした。
そしてあれよあれよと見ているうちに、不安に思っていた「渡辺大雅君」は「横浜高校」を0に抑え、「県立岐阜商業」は5回までに4点を取っていました。
横浜高校0-----4県立岐阜商業
「これは県岐商勝ちますね!」
私は隣の男性に言いました。
「うーん、まだ5回やから…」と男性は言いました。
私は言います
「でも、この展開は予想してなかったでしょ」
その時その男性は私にこう言いました。
「すべては初回の横山君のあのファインプレー。あのプレーが無かったらスコアは逆になってたとしてもおかしくない」
つまりは「横山君」のスーパーキャッチが「県立岐阜商業」に流れを持ってきたと言ったのです。
わたしは「なるほどなぁ」と感心して彼の話を聞いていました。
5回が終わってクーリングタイムになり、両校の選手がベンチ裏で水分補給しています。
そして試合が再開されるとき、「県立岐阜商業」の監督が驚きの采配をするのです。
好投していた「渡辺大雅君」をひっこめ、ここでエースの「柴田君」を登板させてきたのです。
「おっ、ついにエースが来た」
能天気な私はそう言いました。すると隣の男性は
「え~なんでや!これはおかしい」
「もう1~2回渡辺君でいったほうがいいのに」そうはっきり言ったのです。
彼の予想は当たりました。
代わったエースの「柴田君」は「横浜高校」に追い上げられ、この回3点も取られてしまったのです。
それからも「横浜高校」は追い上げ、「県立岐阜商業」も必死で粘り、9回にはサヨナラ勝ちのチャンスを潰し、とうとう延長タイブレークまでもつれ込んでしまいました。
「こんな試合はめったにない」
隣の男性がしみじみ言ったように、甲子園球場全体が、この試合の結末を見届けようと、ある意味異様な雰囲気になりました。
そしてこの試合は延長でさらなるドラマが待っていました。
それが私の人生というか生涯において、本当に「忘れられない試合」となっていくのです。
(次回最終回)
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