ドラマチックな色決めの話⓶

 前回の続き

伊田屋で家を建てていただき、築10年を過ぎたFさんが外壁の塗装を検討されました。

何度もFさんとの打ち合わせを重ね、ようやく「色が決まった」と連絡をいただきました。


その晩私はFさんの自宅で最終確認をして、コーヒーまでごちそうになって帰りました。

Fさんが選ばれた色は「薄いグレー」です。最近近くに新しい家が建ち、その色をFさんは気に入っていらっしゃったのが決め手になりました。




塗装工事を始めるに当たり、まず足場の手配です。家をぐるりと足場で囲うのですが、このとき、カーポートや物置など、足場に邪魔になるものがあれば、あらかじめ移動させる必要があるので注意が必要です。


続いて塗装屋さんに連絡です。

選ばれた色の品番をメールにて送ります。そしてスケジュールの確認です。一番早くていつから工事にかかれるかを確認するのです。



さまざまな段取りを踏んで、工事の日程が決まりました。

私はFさんに日程を伝え、支障がないか確認をします。工期はおよそ10日ほどです。


FさんからはすぐOKをもらい、私は各業者さんに工事のスタートを依頼しました。


足場が組みあがり、いよいよ塗装業者さんが現場に入る朝を迎えました。その時です。



親しくしてくれている塗装業者さんから電話が入ったのです。


「平野さん、本当にこの色でいいの?ちょっと変わった色やけど」


私はさんざん迷われたFさんとの打ち合わせを思い出し、ちょっと面倒になっていました。

「いいんです、その色で。もうさんざん打合せして選んでもらいましたから」


塗装業者さんはいつも親切な人で、打合せの時もいろいろアドバイスをしてくれた人でした。塗装については経験もあって、「こんな色はおかしい」 そう思ったのでしょう。



そのとき確認を怠った私は、あとでとんでもない後悔をすることになるのです。



その日の夕方の事でした。

Fさんからものすごい剣幕で電話がかかってきたのです。


「ちょっと平野さん!私の家、ラ〇ホテルになってまったがね!」


私は何のことかわかりませんでした。

とりあえずFさんが何を怒っていらっしゃるのか確かめるため、私は現場に向かいました。


すると・・・どうしたというのでしょう。


そこには「ピンク色」に塗られたFさんの家が夕焼けに照らされて建っていたのです。



見物に来た近所の人がFさんに向かって

「連れ込みでも始めるのかね」

と言ってます。



あきらかに色を間違えたのです。

どうして?あれほど慎重に品番を確認したのに。さんざん打合せしたのに。

塗装屋さんが私に言いました。

「まだ1面しか塗ってないし、変更するなら早くして」

職人さんたちのスケジュールもあります。私は焦りました。

会社に戻って発注したメールを確認し、そこで私が品番を間違えて送っていたことがわかりました。

私は目の前が真っ白になりました。

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