からあげ弁当に沼った話
持ち帰り専門のからあげ屋さんがあります。
私はこの店のからあげが好きで、仕事帰りに立ち寄ってからあげ弁当をひとつ購入します。
ちなみに私には同居する家族はいません。だから晩ごはんはいつもひとりです。
このからあげ弁当は、大きな鶏のからあげが4個と、少量のきんぴらごぼうと桜漬けが入っています。
からあげには「塩味」「醤油味」のほかに、「カレー味」もあり、ほかにも「四川風」とかいろんなメニューがあります。
わたしはいつも「塩味」一択です。
そして特筆すべきは、ごはん大盛が無料なのです。
「ごはん大盛無料ですが、どうしますか?」
私がからあげ弁当を注文するとき、決まってこのように尋ねられます。
「あっそう…じゃあ大盛で」
私は平静を装いながら答えますが、実は内心ウキウキしているのです。
家に着いてすぐ、まだ十分温かいからあげ弁当を食べるんですが、そこで大盛にしてもらったごはんを半分取り分けてお茶碗に入れます。
そしてこれは明日の朝食にするのです。
なんと慎ましい、なんと切ない食事風景でしょう。
まだ温かいからあげは、外側はカリッとしていて、中はジューシーで、本当においしかったのです。
私は決して大げさでなく、このからあげ弁当を20日間毎晩食べ続けました。
夜、私が店に行くと、店員さんが「また来た」みたいな顔をするようになりました。
そしてある日、いつものように「塩味」でごはん大盛のからあげ弁当を注文して、出来上がるまでの10分間を、車の中で待っていました。
頃合いを見て、引換券を持って窓口に行くと、ちょうど私のからあげ弁当が出来たところでした。
若い女性店員さんが、窓をガラッと開けて
「20番の方~」
と呼びます。20番は私の番号です。
引換券を渡して、いつものようにからあげ弁当を受け取りました。
すると、その若い女性店員さんが、私を見つめながらこう言ったのです。
「ちゃんと野菜も採って下さいね」
これが「恋」のはじまりでした・・・
というのは噓ですが、私はその言葉が本当にうれしかったのは間違いありません。
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